ストレスについて(コラム5)
コラムコラム1の「企業とメンタルヘルス」では、厚生労働省が実施した「平成30年 労働安全衛生調査(実態調査)」によると、「現在の仕事や職業生活に関することで、強いストレスとなっていると感じる事柄がある」労働者の割合は58.0%であることをお伝えしました。
そこで、今回は、ストレスについて考えていきたいと思います。
■ストレスとは
個人にとって心理的あるいは身体的な負担となるような出来事や要請をストレッサーといいます。ストレッサーには、①物理的ストレッサー(騒音、高温)、②化学的ストレッサー(化学物質による刺激)、③生物的ストレッサー(細菌、花粉等)、④心理社会的ストレッサー(人間関係等)があります。
これらのストレッサーによって引き起こされた心理的反応、身体的反応及び行動反応をストレス反応(ストレス状態)といいます。
■ストレス反応
ストレス反応の具体的内容は以下のとおりです。
■ストレス反応の3段階
セリエ(Selye)は、ストレッサーに対する反応として「警告期」、「抵抗期」、「疲はい期」の3つの段階があると説明しました。
ストレッサーに反応すると、不安や緊張などの急性のストレス反応を示す「警告期」からストレッサーに慣れてきて乗り越えたように感じる「抵抗期」に続き、エネルギーを使い切ってしまう「疲はい期」に進みます。この疲はい期では、初期にストレス反応だったものは、元にもどりにくくなり、うつ状態や不安障害などのストレス関連疾患につながっていきやすくなります。
疲はい期に至ってしまう前の早い段階で、対処する必要があることがわかります。
■ストレスコーピング
ストレス事態に対して何らかの対処を行うことをコーピング(coping)といいます。
次のようにコーピングには3種類の型があるとされています。
特に職場におけるストレッサーの多くは、人間関係などの問題などであり、ストレッサーに直接アプローチして取り除くことができる場合が少ないと思います。そのため、誰かに話を聞いてもらうなど、感情焦点型コーピングが重要になってきます。すると、企業としては、従業員の心の健康の保持と増進のために、従業員が自発的に相談できる環境を整備することの重要性もみえてきます。
しかし、常時勤務している従業員が50人未満の小規模事業場では産業保健スタッフ等の確保が難しい場合があるかもしれません。その場合には、社外の地域産業保健センターなどの地域窓口を活用することも考えられます。京都府内では、7つの地域産業保健センターが設置され、各種の産業保健サービスが無料で提供されています。その中には、「メンタル不調の労働者に対する相談・指導」もあり、従業員が直接相談できる環境がありますので、企業としては、社内でこのような情報提供をすることも大切です。
参考文献
無藤隆他 2004年 心理学 有斐閣
丹野義彦他 2015年 臨床心理学 有斐閣
弁護士 竹中 由佳理