パワーハラスメント(コラム4)

コラム
■パワーハラスメントの相談件数 厚生労働省がまとめた「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」によれば、民事上の個別労働紛争における相談内容別の件数推移において、令和元年度は、いじめ・嫌がらせが対前年度比において5.8%増加し、87,570件に達していることが示されています。下記のグラフからは、「いじめ・嫌がらせ」の件数が右肩上がりに増加していることが目立ちます。 出所:令和2年7月1日公表「令和元年度個別労働紛争解決制度の施行状況」   ■いわゆる「パワハラ防止法」(労働施策総合推進法の改正) 2019年5月、労働施策総合推進法が改正され(いわゆるパワハラ防止法)、法的な規制が強化されました。 主な内容は、次のとおりです。 大きな特徴は、上記③の職場におけるパワーハラスメント対策が、義務づけられているという点です。 大企業は、令和2年6月1日から義務化されており、中小事業主令和441から義務化されます。   同法の中小事業主とは以下の①または②を満たす法人及び個人です。 上記④の指針とは、事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号。https://www.mhlw.go.jp/content/11900000/000584512.pdf)です。事業主は必ず読むべき指針です。   この指針には、職場におけるパワーハラスメントの内容が示されていると共に、客観的にみて、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については該当しないと説明されています。   また、代表的な言動の類型や、類型ごとに典型的にパワハラに該当する、該当しないと考えられる例が挙げられており、どのようなものがパワーハラスメントに該当するかをしっかりと認識することができます。例示されているパワーハラスメントの類型は以下のとおりです。 もっとも、指針に掲載されている例はあくまでも例示であり、個別の事案の状況によって判断が異なる場合もあることを留意して、職場におけるパワハラに該当するか微妙なものも含め広く相談に対応するなど、適切な対応を行うことが求められています。       ■事業主に求められる措置 上記の指針で事業主に求められている措置は以下の4つです。 指針において、上記の他にも行うことが望ましいとされている内容の1つに、職場におけるパワーハラスメントの原因や背景となる要因を解消するための取り組みも挙げられており、労働者個人のコミュニケーション能力の向上を図ることは、職場におけるパワーハラスメントの行為者・被害者の双方になることを防止する上で重要であると述べられています。 また、部下から「パワハラ」と言われるのが嫌で、上司が適切な業務指示ができない事態になってしまうというのも避ける必要があります。そのため、「指針」には、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当せず、労働者が、こうした適正な業務指示や指導を踏まえて真摯に業務を遂行する意識を持つことも重要であることにも留意する必要があると説明されています。   ■良好なコミュニケーションをとるために コラム3においても、日頃からコミュニケーションをとることの重要性をお伝えしましたが、パワハラ防止の観点からも、同様に、事業者は、風通しのよい職場環境を維持することに努め、コミュニケーションの活性化を図ることが大切です。   弁護士 竹中 由佳理