Q.わたしの叔母は、特に保険金受取人を指定せずに、簡易生命保険をかけていましたが、その後亡くなりました。 この保険をかけた当時は、私の母が生きていましたが、その後叔母より先に亡くなっており、叔母の親族は、姪である私だけです。 私は、叔母の相続人の立場で保険金を請求したのですが、郵便局から、「あなたは簡易生命保険法第55条第2項で定められている『遺族』に当たらないので、支払うことはできません。」と断られてしまいました。 私は、保険金を受け取れないのでしょうか。

夫婦・親子
Q.わたしの叔母は、特に保険金受取人を指定せずに、簡易生命保険をかけていましたが、その後亡くなりました。 この保険をかけた当時は、私の母が生きていましたが、その後叔母より先に亡くなっており、叔母の親族は、姪である私だけです。 私は、叔母の相続人の立場で保険金を請求したのですが、郵便局から、「あなたは簡易生命保険法第55条第2項で定められている『遺族』に当たらないので、支払うことはできません。」と断られてしまいました。 私は、保険金を受け取れないのでしょうか。 A.『遺族』に当たる人がいないので、あなたは、叔母さん若しくはお母さんの相続人として、保険金を受け取ることができると考えます。  簡易生命保険法55条は、保険契約者が保険金受取人を指定せずに死亡した場合の死亡保険金の受取人を『遺族』、すなわち、被保険者の配偶者(届出がなくても事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)、子、父母、孫、祖父母及び兄弟姉妹並びに被保険者の死亡当時被保険者の扶助によって生計を維持していた者及び被保険者の生計を維持していた者と定めています。  この規定の趣旨については、簡易保険においては、保険契約の目的が、多くの場合、保険事故が発生した場合に被保険者又はその遺族の経済生活の安定を確保することにあるものと認められることを理由に、保険契約者が保険金受取人を指定しない場合には、被保険者又は被保険者の遺族が保険金受取人となることとしていると説明されています(山下典孝「保険法における保険金受取人変更に関する一考察」)。  そうすると、被保険者及びその被保険者の遺族がまったく存在しない場合にまで法55条を適用することは、その立法趣旨に反することになります。  この場合は、一般法である保険法ないし民法が適用され、原則に戻って、保険契約者兼被保険者が死亡保険金の受取人となると解釈すべきであり、その後保険金受取人たる保険契約者が死亡した場合には、同人の相続人を受取人と指定したものと考えるのが妥当であるといえるでしょう(山下友信『保険法』)。  あるいは、つぎのようにも考えられます。  簡易生命保険法は、保険法とは、特別法・一般法の関係に立つので、簡易生命保険法に規定のないところは、保険法の適用があると考えられます。  ところで、簡易生命保険法には、『遺族』が死亡した場合についての規定はありませんが、保険法46条は「保険金受取人が保険事故の発生前に死亡したときは、その相続人の全員が保険金受取人となる」と規定しています。  そうすると、『遺族』が保険金受取人であることに争いはないので、『遺族』が亡くなったときは、保険法46条により『遺族』の相続人が保険金受取人となると考えるのが妥当でしょう。  以上のように、叔母さんの姪御さんであるあなたは、①叔母さんの相続人として、あるいは②叔母さんの『遺族』であるあなたのお母さんの相続人として、いずれの立場からでも、保険金受取人となれると思います。